「リウマチ、それとも…」
手指の不調の正体は?

皆さんは手指の関節の痛みやこわばり、そして変形などのつらい不調が
「40代以上の女性に特に生じやすい」という事実をご存じでしょうか?
これらの不調を自覚すると「リウマチではないか」と考える人が少なくありませんが、
医療機関で検査をしてみると「変形性関節症」と診断されるケースの方が
圧倒的に多いというのです。
そこで両疾患の発症のメカニズムや対処法について「手の外科」を専門とする
二人の医師に話を伺いました。

手外科専門医
スペシャル対談

平瀬 雄一 医師

四谷メディカルキューブ
手の外科・マイクロサージャリーセンター センター長

東京慈恵会医科大学卒業。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学後、東京慈恵会医大柏病院形成外科医長、埼玉成恵会病院形成外科部長などを経て、2010年より現職。日本手外科学会専門医。

西田 圭一郎 医師

岡山大学学術研究院医歯薬学域 准教授
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 整形外科学分野 担当

高知県土佐高校卒業。岡山大学医学部卒業。東京医科大学未来医科学研究寄附講座客員教授などを歴任し、2017年より現職。現在は岡山大学病院運動器疼痛センター・センター長、日本手外科学会理事、日本臨床リウマチ学会理事なども務めている。

変形性関節症とは
どのような疾患ですか?

平瀬
指の関節に腫れや変形が生じる疾患です。症状が第1関節に出るのは「へバーデン結節」、第2関節に出るのは「ブシャール結節」、親指の付け根あたりに出るのは「母指CM関節症」といいます。
いずれも軟骨がすり減るなどして痛みが生じ、進行するとモノがつかみにくくなる場合もあります。
初期は専門医でないと判別が難しい

リウマチを疑って
医療機関を受診される方も

西田
変形性関節症とリウマチは「指の関節の腫れやこわばり、痛み」といった自覚症状や「40代以降の女性が患いやすい」ということなど共通する点が多く、特に初期は専門医でないと判別が難しいのです。
平瀬
日本におけるリウマチの患者数は60〜100万人と推定されています。※1
一方、高齢者(平均65.6歳±13.0)におけるブシャール結節の有病率は57.5%※2とのことですから、日本の高齢者約3600万人のうちの5割と考えても、1800万人以上の患者さんがいることになります。
つまり変形性関節症を患っている人の方が桁違いに多いのです。
西田
実際には変形性関節症を患っている方が多いのに、リウマチの方が知られていて、先に想起されてしまう。
その背景には、特に手指の変形性関節症が「年齢のせい」「しばらくすれば変形して痛みが落ち着く」と諦められてきたことや、リウマチの治療法が確立されていなかった時代に、その症状のインパクトがあまりにも強く、「リウマチだったらどうしよう」と心配になる方が多かったことなどが挙げられると思います。
  • ※1 厚生科学審議会疾病対策部会 「リウマチ等対策委員会報告書」(平成30年11月)
  • ※2 「大規模住民コホート研究ROADスタディ」

変形性関節症の
原因と対処法

平瀬
手指の不調を訴える方は産後授乳期と更年期以降の女性に多いのですが、2つの時期に共通するのは「女性ホルモンの一つである『エストロゲン』が急激に低下する」ということ。
エストロゲンは女性の全身の健康を守る実に多様な働きを持っているので、低下すると様々な症状を引き起こすのです。
西田
手の使い過ぎも痛みの誘因になりますから、症状のある方は草むしりなど手を酷使する作業を控えていただきたいですね。
治療法には、動きを制御する「装具療法」や「薬物療法」、「手術療法」などがあります。まずは疾患を特定するためにも、手外科やリウマチの専門医を受診されることをおすすめします。
平瀬
更年期の症状をトータルで診てもらうという意味では、かかりつけの婦人科医を持たれるのもよいですね。
また初期であれば、エクオール含有食品(下段参照)を選択肢の一つとしてセルフケアに取り組まれるのもよいでしょう。
大豆由来の成分
「エクオール」に注目

女性ホルモンの一つに、卵巣でつくられる「エストロゲン」があります。エストロゲンは生殖や子育てを行う上で欠かせないものである一方、全身の健康に関わる多彩な働きも持っています。
「腱などの腫れを抑制する」というのもその一つ。
しかし、更年期や産後授乳期には急激に減少するため、そうした働きが失われてしまうのです。
手指に不調が生じるのも、その影響だと考えられます。

そこで注目されるのが「エクオール」です。大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌によって代謝されて産生されるエクオールには「エストロゲンによく似た働きをする」という特長があります。
私が手指の不調を抱える人にエクオール10mgを含むサプリメントを毎日摂取してもらったところ、3カ月後には、6割近くの人に機能や痛みの改善が見られました。
ただ腸内でエクオールをつくり出せるのは日本人で約5割です。
ご自身がエクオールを産生できるかどうかは市販のキットで検査ができますが、結果に関わらず、大豆を乳酸菌で発酵させてつくったエクオールのサプリメントを利用するのも対策の一つです。

関節リウマチの
症状・治療法は?

関節リウマチは、関節が腫れて痛みや倦怠感、こわばりなどの症状が生じる病気です。
症状が手指ばかりでなく、足の先や膝、それに肩や肘の関節にも現れるというのが、通常の変形性関節症にはない特徴です。

リウマチの腫れが続くと、やがて軟骨だけでなく骨までが破壊されていき、関節が大きく変形していきます。

最近の研究では50〜60代が好発年齢とされていますが、若年性特発性関節炎という子どものリウマチもありますので、全年齢を通して起こりうる病気といえるでしょう。
治療法としてまず検討されるのは薬物治療です。日本でも「分子標的薬」をはじめ、有効な治療薬が増えてきており、副作用に注意して適切に用いれば、関節の破壊がかなり抑制されます。
抗リウマチ薬の効果を最大限に活かすには早期診断・早期治療が大切ですので、気になる症状があれば迷うことなく医療機関を受診されることをおすすめします。