アラフォー:around forty
40歳代からの
健やかな日々のために

女性の心身には40歳代以降、様々な変化が見られ、不調が表れやすくなります。
さて、その背景にある変化の正体、そして予防・治療の方法は?
実際に不調を経験しているAさんが、婦人科・女性医療の専門医である麻生武志先生に相談しました。

婦人科の専門医に
相談してみよう

麻生武志先生

1965年京都大学医学部卒業。1970年京都大学大学院医学研究科博士課程修了。東京医科歯科大学名誉教授、日本産科婦人科学会名誉会員・認定産婦人科専門医、日本女性医学学会名誉会員・認定専門医。

相談者Aさん(53才)

島根県出身。都内企業の広報部で課長を務める。デスクワークが主で1日に12時間パソコンに向かうことも。コロナ禍により今年2月以降は在宅勤務。同居する家族は夫(53歳・システムエンジニア)と犬。趣味は旅行・茶道・スポーツ観戦。40歳を境にいくつかの不調(下図参照)を覚え、4年ほど前から症状の急激な進行を自覚。現在も悩まされている。

そもそも更年期とは?

Aさん
私は40歳代後半以降、体重・中性脂肪の増加や髪の変化、汗やほてりなど、様々な変化を感じて「更年期の不調では?」と考えるようになりました。そもそも更年期とは?
先生
閉経(月経が1年以上ない状態)の前後5年ずつを合わせた10年間」を医学的に「更年期」と定義しています。
日本人女性は平均して50~51歳で閉経を迎えますので、45~55歳くらいが「更年期」に当たります。もちろんこれは一つの目安であって、個人差があります。

更年期の不調の
症状と原因

Aさん
更年期の不調には、どのようなものがありますか?
先生
更年期の初期にはまず月経周期が不順になり、ほてりや急に噴き出すような発汗が見られ、次いで体重増加や肌の衰え、手指の痛み、肩こり、腟の乾燥感や性交痛などを実感します。また、睡眠障害や、うつ気分、イライラに悩むことにもなります。さらに年月が経つに従って、これらの症状・障害に加え、脂質異常症(悪玉コレステロールや中性脂肪が増える)や骨密度の低下による骨粗しょう症・骨折のリスクが高くなり、物忘れが気になるようになります。
Aさん
様々な不調が生じるのはなぜですか?
先生
女性特有の変化・不調に深く関連するのが、更年期における「エストロゲン」の急激な低下です。
思春期以降、女性の体内では卵巣から分泌される女性ホルモンの一つ「エストロゲン」が増加し、子宮や乳房など生殖に関わる器官の成長・発達を促します。エストロゲンは脳や血管、骨、皮膚、関節などの健康を維持する上でも大きな役割を担っているため、閉経が近づいてエストロゲンが低下するのに伴い、体の色々な部分で不調・障害が生じやすくなります。

受診する上での
ポイントと対処法

Aさん
受診する上でのポイントは?
先生
訴えを聴き、納得できるまで説明をしてくれる「かかりつけ医」を持つことをお勧めします。
更年期の健康問題に対しては、個別の不調や疾患に対処するだけでなく、心と身体を全人的・トータルに診て、長期的な視点でケアすることが必要です。そのためには、受診者と医師とのコミュニケーションが非常に重要になります。
Aさん
いろいろな対処法や治療法があると聞きますが。
先生
薬物療法として、低下したエストロゲンを補う「ホルモン補充療法」や「漢方療法」などがあります。
ホルモン補充療法では、患者さんの状態に応じて、飲み薬、貼り薬、塗り薬が使用されます。また、必要に応じて睡眠薬、抗うつ薬、安定剤などを用いることもあります。
Aさん
自分でできる対処法があれば教えてください。
先生
バランスのよい食事や適度な運動に取り組みつつ、効果が証明されているサプリメントを活用してみては。
例えば骨密度の低下を放置していると、年齢を重ねてから骨折して寝たきりになるリスクが高まります。また”悪玉”とされるLDLコレステロールや中性脂肪の増加は「脂質異常症」と呼ばれる状態を招き、動脈硬化を引き起こし、放置すると将来は心筋梗塞や脳梗塞を発症する原因になります。そうしたリスクを抑えるには、若いうちからバランスの良い食事や適度な運動に取り組むことが重要です。また有用性が確かめられている成分である「エクオール」を配合したサプリメントを活用するのも一つの方法です。

エクオールとは?

Aさん
エクオールとは何ですか?
先生
エストロゲンの欠乏を補う「多彩な働き」が期待できる、大豆由来の成分です。
エクオールは大豆に含まれるイソフラボンの一つであるダイゼインを腸内細菌が代謝することで産生される成分で、エストロゲンと似た働きを持っています。様々な研究でその働きが裏付けられていて、例えばエクオール10mgを12週間摂取すると、更年期症状が改善し、糖尿病や動脈硬化の指標が有意に正常化、骨密度の低下が抑えられることが明らかになっています。ただし、体内でエクオールを産生できる人の割合は日本人女性の2人に1人程度に過ぎず、あまり大豆食品を摂らない若い人ほどその割合が低くなっています。薬物療法までは必要でない場合などに「補完代替療法」として、エクオールを含むサプリメントを摂ることで不調や障害を予防し、改善することが期待できます。
正しい理解が、
あなたの豊かな
人生につながります
Aさん
健やかに年齢を重ねていくためのアドバイスをお願いします。
先生
自分の心身の変化を正しく理解するとともに、一緒に生活している人たちにも理解してもらうことが重要です。
この時期の不調・障害は、それまでの生活習慣に密接に関連するために個人差が大きく、その後のQOL(人生の質)にも大きな影響を及ぼします。更年期には全ての女性が卵巣の機能の低下・停止を経験しますので、むやみに恐れるのではなく、正しい情報を基に、冷静に対処するべきです。
特に世界中がコロナ禍に見舞われている現在は、これまでに経験したことがない日常生活を余儀なくされています。不安やストレスによって体調が乱れやすくなっていますし、家にこもってばかりいては運動不足になるでしょう。現状と将来を見据えた健康管理が特に重要になっています。
また、超高齢社会を迎えた我が国においては、中高年女性の社会活動への参画が強く求められています。更年期の問題については、家庭や職場の理解と配慮も欠かせません。ぜひご自身で正しく学び、周囲とも協力しながら豊かな人生を送っていただきたいと思います。

初回掲載時期:2020年11月