精神症状も生じやすい“更年期”
動脈硬化や認知症にも注意を

女性は40代になると、のぼせやほてり、急な発汗などのホットフラッシュと
呼ばれる症状に悩まされやすくなることはよく知られていますが、
実はこの年代からは、不安やイライラのような精神的な不調、
そして物忘れなども起きやすくなるといいます。
そうした症状の背景にある要因や対処法について、
日本女性医学学会の若槻明彦理事長に話を伺いました。     

更年期の不調は心や記憶力にも

若槻

40代半ばから50代半ばにかけての「更年期」といわれる時期の女性には、様々な身体的な不調が生じやすくなりますが、不安感や抑うつ、イライラなどの精神的な不調や不眠、物忘れの増加を訴える方も少なくありません。

これらの症状は個人的な性格に起因するケースもあります。また、この年代の女性には、お子さんの教育や親御さんの介護などの負担が重くのしかかったり、職場で大きな責任を負ったりしがちであるということも影響しているでしょう。

一方、体内ではこの時期、女性ホルモン「エストロゲン」の急激な低下という問題も起こっています。エストロゲンが低下すると、脳の下垂体という器官からエストロゲンの分泌を促すためのホルモンが盛んに分泌されるようになるので、神経が興奮してしまい、精神的な不調の一因にもなっていると考えられています。

このように様々な要因によってもたらされる精神的な不調は、女性のQOLを著しく低下させますし、社会における活躍を阻害することも間違いありません。女性が元気に活躍できない状況はご本人やご家族にとって残念であるばかりでなく、企業にとっても、私たちの社会全体にとっても、大きな損失であるといえるでしょう。

「エストロゲン」の低下について

若槻

エストロゲンについて、改めてご説明します。思春期以降、女性の体内では卵巣から分泌されるエストロゲンが急激に増加し、子宮や乳房など生殖や子育てに関わる器官の発達を促します。エストロゲンは脳や骨、皮膚、関節など、全身の健康維持に役立つ多彩な働きも備えているため、閉経が近づいて急激に低下すると、ホットフラッシュはもとより、骨量の低下や肌の衰えなど、様々な問題を引き起こすのです。

悪玉コレステロールが
認知症リスクに影響

若槻

エストロゲンにはまた、LDL(悪玉)コレステロールを減らし、HDL(善玉)コレステロールを増やすという働きもあります。更年期以降はその働きが失われていくので、当然ながらLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少していきます。このような変化に加えて、エストロゲンの低下は血管のしなやかさを低下させて動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスクを高めます。

また先日、世界的な医学誌「ランセット」に掲載された論文により、LDLコレステロールの値が高い人ほど、将来的に認知症を患うリスクが高いことが明らかにされました。認知症が大きな社会問題となっている中、この研究結果は大いに注目されています。
※20年間以上に渡る180万人以上を対象とした血中コレステロールと認知症リスク:後方視的コホート研究(英国医療ビッグデータの解析)

大豆由来の成分
「エクオール」に注目

若槻

低下するエストロゲンの働きを補う成分として、近年は「エクオール」が注目されています。エクオールは大豆に含まれるイソフラボンの一つであるダイゼインを腸内細菌が代謝することで産生される成分で、エストロゲンとよく似た働きを持っているのです。様々な研究でその働きが裏付けられており、閉経後の女性にエクオール10mgを12週間摂取してもらう試験では、LDLコレステロールの値が有意に低下するなど、動脈硬化のリスクを抑制できる可能性が明らかになりました。

ただ、腸内でエクオールを産生できる人の割合は日本人女性で2人に1人程度に過ぎず、あまり大豆食品を摂らない若い人ほど、その割合は低くなっています。ちなみに、閉経後の女性に有酸素運動をしてもらう試験では「エクオールを腸内で産生できる人は運動をすることによって血管のしなやかさが高まる」ということが分かりました。
若槻

ご自身がエクオールを産生できるかどうかは、市販のキットで調べられます。産生できない人はもちろん、できる人も、エクオールを含むサプリメントを活用すれば、手軽にエクオールを摂ることができます。「乳酸菌で発酵させてつくっているか」「医療機関で扱っているか」などを基準に製品を選ぶとよいでしょう。

変化を感じたら早めに対策を

若槻

現代は「人生100年時代」ともいわれますが、せっかく寿命が長くなったわけですから、その質も上げていくことが大切ですよね。そのためにはまず女性の皆さんご自身が、末長く健康を維持するための正しい情報を学び、健康リテラシーを高めることが重要です。

そして、将来起きる可能性の高い不調や疾患について学ばれたら、それらが起きてから治療するのではなく、ぜひ予防に取り組んでください。例えばLDLコレステロールの値が高い場合は、日頃から適度な運動とバランスのよい食事を心がけることが重要です。エクオールの活用を検討されてもよいでしょう。
婦人科の
「かかりつけ医」に相談を
若槻

また、女性が抱える不調の背景には、女性ホルモンの問題があるケースが多いですから、個別の症状に対処するだけでなく、全身をトータルでケアすることが大切です。そのためには信頼できる婦人科のかかりつけ医を持ち、定期的に骨量やコレステロールの値を調べてもらうなどして、ご自身の健康状態を客観的に把握されるのがよいでしょう。

日本女性医学学会では「女性の一生におけるQOLの向上」を最大の目標として、女性の健康寿命を延伸するための様々な活動に取り組んでいます。ぜひ専門家によるケアも取り入れながら、心身ともに健やかな人生を楽しんでください。