なぜ女性多いの?手指不調

皆さんは手指の痛みやしびれ、腫れ、そして変形などのつらい不調が
「中高年以降の女性に特に生じやすい」という事実をご存じでしょうか?
これら手指の不調は「なぜ女性に 起きやすいのか」、
そして「どのように対処すればよいのか」・・・こうした疑問について、
手外科の専門医である平瀬雄一先生にお答えいただきました。
平瀬 雄一 医師
四谷メディカルキューブ
手の外科・マイクロサージャリーセンター センター長

東京慈恵会医科大学卒業。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学後、東京慈恵会医大柏病院形成 外科医長、埼玉成恵会病院形成外科部長などを歴任し、2010年より現職。日本手外科学会専門医。

平瀬 雄一 医師

四谷メディカルキューブ
手の外科・マイクロサージャリーセンター センター長

東京慈恵会医科大学卒業。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学後、東京慈恵会医大柏病院形成 外科医長、埼玉成恵会病院形成外科部長などを歴任し、2010年より現職。日本手外科学会専門医。

手指不調悩む人は、
なぜ
女性多いの?

平瀬

A 「エストロゲン」の低下が一因と考えられます。
女性の体内では思春期以降、卵巣から分泌される女性ホルモンの一つである「エストロゲン」が増加します。エストロゲンは子宮や乳房など生殖に関わる器官の発達を促す一方で、脳や心臓、血管、骨、皮膚などの全身の健康を守る上でも大きな役割を果たすのです。
そのため、エストロゲンが急激に低下する更年期(閉経前後の5年ずつを合わせた10年間)以降は、月経不順やホットフラッシュ(急な汗、ほてり等)、髪や肌の衰え、骨密度の低下、動脈硬化など様々な不調が起きやすくなります。 手指の不調もその一つで、しびれや関節痛、関節の腫れなどが発症しやすくなります。近年では、このような更年期を迎える頃から始まる手指の不調、軽い症状から病気として治療を受けるまでを総称して「更年期手」と呼んでいます。

手指不調
起こりやすい時期

平瀬

A エストロゲンが低下する更年期や、その後の老年期などです。
手指の不調は、エストロゲンが低下する時期に起こりやすく、閉経前後の更年期やその後の老年期のみならず、授乳期などにも起こることがあります。

どのように
進行していくの?

平瀬

A まず腫れや痛みを覚え、数年後に変形が生じるケースが多いといわれます。
手指の不調には、指を曲げるための腱や鞘に炎症が生じる「腱鞘炎」や、関節が炎症を起こして変形する「変形性関節症」など、いくつかの種類があります。変形性関節症の一つであるへバーデン結節の場合、50代で腫れや痛みを覚え、60代で変形が生じる人が多いので、変形を抑制するためには、腫れや痛みを覚えた段階で受診し、適切な対処を行うことが重要です。

どんな人起きやすい?

平瀬

A ご家族に手指の不調がある人は「リスクが高い」といわれます。
お母さんやお祖母さんの指に変形がある人は、そうでない人に比べてかなりリスクが高いといわれます。遺伝だけでなく、食生活や生活環境を受け継いでいることが影響するようです。まずは「家族歴」の有無を調べてみるとよいでしょう。

手指不安覚えたとき、
どうすればいい?

平瀬

A まずは受診をおすすめします。エクオールの活用も検討を。
違和感を覚えながら放置しておくと、不調が悪化する恐れがあります。原因を特定するためにも、まずは医療機関を受診されることをおすすめします。また、自分でできる対策として、部位の安静や固定(テーピング)、ストレッチなどとともに、エクオールの活用を検討されてもよいでしょう。
大豆由来成分
「エクオール」注目

更年期以降に急激に減少する女性ホルモン「エストロゲン」を補うものとして、いま注目されているのが「エクオール」です。エクオールは大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌によって代謝されて産生される成分で「エストロゲンによく似た働きをする」という特長があります。
手指の不調を抱える人にエクオール10mgを含むサプリメントを毎日摂取してもらったところ、「3か月後には6割近くの人に機能や痛みの改善が見られた」という報告があります。

ただ腸内でエクオールを作り出せるのは、日本人では約5割ほどです。ご自身がエクオールを産生できるかどうかは市販のキットで検査ができますが、結果に関わらず、大豆を乳酸菌で発酵させて作ったエクオールのサプリメントを利用するのも対策の一つです。

初回掲載時期:2023年2月10日