閉経に伴って生じる
「二つの問題」
メノポーズ(閉経)とは「卵巣の活動性が失われて月経が永久に停止した状態」を指します。月経が来ない状態が12か月以上続いたら、そこから1年前を閉経年齢とすることになっています。日本人の平均閉経年齢は約50歳で、その前と後の5年ずつを合わせた10年間を更年期といいます。
更年期以降、女性の心身に様々な健康問題が起きやすくなりますが、これらは二つに大別できます。一つは、急な汗やほてりなどの「ホットフラッシュ」に代表される、まさに更年期に起こる不調・疾患です。仕事や家事の妨げにもなり、大変つらいのですが、やがては収まっていく一時的なものでもあります。もう一つは、更年期の後に訪れる老年期に注意すべき不調・疾患です。「人生100年時代」といわれる現代では、多くの人が老年期を30年、40年と生きていかないといけないわけで、この時期をいかに健やかに過ごせるかが大きな課題となってきているのです。
これまで日本の医療においては、残念ながら「女性の更年期・老年期の健康問題」というテーマが重要視されることは少なく、十分な対策が講じられてきたとはいえないと、私は考えています。その理由を端的に言うなら、「クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)は下がるけれども、命に関わらないから」ということになるでしょう。結核などの感染症や生活習慣病に起因する脳血管疾患、がんなど、時代ごとに優先される健康課題が移り変わってきて、近年になってようやく、更年期以降の不調が脚光を浴びるようになってきたのだと考えています。