メノポーズ週間特別企画

更年期以降の女性を
悩ませる
「手指の不調」とは?
―3人の専門家に聞く、
その背景と対処法

高尾 美穗先生
10月18日は「世界メノポーズデー」※1です。そして日本では、この日から24日までの1週間が「メノポーズ週間」と定められており※2、さまざまな啓発活動が展開されます。そんな時期に合わせて「更年期以降の女性の手指の不調」に注目した記事をお届けします。

「朝、手がこわばる」「指の関節が痛む」といった声は、実は更年期世代の女性から多く聞かれるもの。近年は「メノポハンド」と名づけられたことにより、手外科の領域でも注目が高まっています。そこで、日本女性医学学会理事長の髙松潔先生、女性の健康とメノポーズ協会理事長の三羽良枝さん、日本手外科学会理事長の酒井昭典先生の3名に、手指の不調と更年期の関係、その背景とケアの選択肢についてお話を伺いました。

※1:メノポーズ(Menopause)=「閉経」
※2:一般社団法人日本女性医学学会が制定

本記事をお読みいただいた皆様の中から抽選で最大500名様(事前登録制)を
オンラインセミナーにご招待します。
ご家族やご友人、ご同僚をお誘いのうえ、ご参加ください。もちろん、お一人でのご参加も大歓迎です。

専門家紹介

日本女性医学学会理事長
髙松 潔先生
女性の健康とメノポーズ協会理事長
三羽 良枝さん
日本手外科学会理事長
酒井 昭典先生

更年期とはどんな時期?

そもそも「更年期」とはどのような時期を指すのでしょうか?

髙松
「メノポーズ」は日本語でいうと“閉経”のことです。月経が12か月間まったく来なかったとき、その最終月経を「閉経」と定義します。そして、その前後5年間、合計10年間を「更年期」と呼びます。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳。つまり更年期とは、45歳過ぎから55歳過ぎにかけての10年間といえるでしょう。この時期は、それまで全身を護ってくれていた「エストロゲン」という女性ホルモンが大きく変動・減少するため、さまざまな心身の不調が出やすくなります。
三羽
理事長を務めております女性の健康とメノポーズ協会には、1996年の設立以来、更年期前後からの不調に悩む女性から多くの声が寄せられています。当時は「更年期の不調は我慢するしかない」と考えられていた時代。けれど、当事者の実感や苦しみは深く、医療の支援も限られていました。是非とも、科学的根拠のある情報を届けたいという思いで活動を続けています。
髙松
更年期は「女性のライフステージの折り返し地点」とも言えますね。この時期はエストロゲンレベルが低下してしまうため、骨粗しょう症や動脈硬化のリスクが高まります。さらに加齢の影響も加わって、認知機能の低下などが生じます。つまり、更年期はその後に控える老年期に備える“分岐点”とも言えるのです。だからこそ、この時期に自分の体調の変化と向き合い、将来に向けた備えを考えることが大切です。
三羽
「更年期を過ぎれば、青空が見えてくる」――そんなふうに言われることもありますが、実はそうではないのですよね。「いまをどう過ごすか、そして更年期に積極的な健康づくりをすることが、将来の自分の“元気”を決める」、更年期の方々にはそう考えていただけたらと思います。私たちの活動でも、60代、70代になってからの方がずっと元気で楽しそうに過ごされている女性に出会う機会が増えました。そうした方々に共通しているのは、生活習慣等を見直し自分の体と丁寧に付き合っておられる。更年期はその第一歩。年齢を重ねることを前向きに受け止めるヒントを、私たちはもっと伝えていきたいと考えています。

手指の不調は更年期に多い?

「朝、指がこわばる」「指の関節が痛む」など、手指の不調を訴える方には女性が多いと聞きます。

髙松
手指の痛みやこわばりは、婦人科の外来でも時折相談されることがあります。更年期にホルモンの変動があることは事実であり、エストロゲンの低下が原因の可能性もありますが、医学的に明確な因果関係が証明されているわけではありません。原因は一つではなく、整形外科的な疾患も含めて、さまざまな可能性が考えられると思います。
三羽
当協会では、女性の健康電話相談を1998年より続けておりますが、手指の不調に関する声が年々増えています。2023年度の電話相談986件のうち、およそ3割が手指に関するものでした。特に60歳前後の女性からの訴えが多く、「指のこわばりでペットボトルが開けられない」「指の変形と痛みでキーボード入力ができず仕事に影響」といった日常生活に直結する悩みが多く聞かれます。痛みや不快感があっても、「年齢のせい」「更年期だから仕方ない」とあきらめてしまう人が多いのも実情です。けれど、不調には対応策も治療法もあります。そのことをもっと知ってほしいですね。

2022年には、日本手外科学会が“メノポハンド”という新たな提言を発表されました。

酒井
日本手外科学会では、更年期を迎える年代の女性に見られる、原因がはっきりしない手指の痛みや違和感に対し、「メノポハンド」という名称を提唱しています。これはまだ病名がつく前の段階、いわば“未病”の状態と捉えることができます。違和感を覚えながらも我慢してしまい、結果として進行し、ばね指や母指CM関節症、手根管症候群などの疾患に至るケースもあります。だからこそ、早めに気づき、医師に相談することが大切だと考えています。

更年期の不調の原因と対処法

更年期に起こる不調の多くに、エストロゲンの低下が関係しているといわれます。

髙松
エストロゲンは、卵巣から分泌される主要な女性ホルモンの一つです。月経周期をはじめとする生殖機能の調整に関わるだけでなく、骨密度の維持や血管の柔軟性、自律神経の安定、さらには肌や髪の健康にも影響を与える、いわば全身の健康を護るホルモンなのです。エストロゲンの分泌は、更年期に入ると大きく変動し、やがて急激に減少します。この変化が自律神経のバランスを乱し、ホットフラッシュや発汗、不眠、イライラなどさまざまな不調を引き起こします。
髙松
婦人科ではこうした不調への対処法として、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、抗うつ薬、カウンセリングなどを、症状の程度や背景に応じて選択していきます。
ご自身で取り組めるセルフケアとしては、まず食事や運動、睡眠を中心とする生活習慣の改善が重要です。また、「エクオール」のような選択肢もあります。これは、大豆イソフラボンから腸内細菌の作用によって産生される成分で、エストロゲンに似た働きを持つとして注目されています。ただし、日本人女性の約半数は腸内でエクオールを作れないといわれており、サプリメントにより補う方法もあります。
三羽
「女性の健康電話相談」でも、「医療機関で勧められ、エクオール等を摂るようにしたら少し楽になった」という声がよく聞かれますよ。もちろん個人差があるものですが、「体に合った対処法を見つけたい」という思いに、もっと応えられる情報提供が必要だと思います。

メノポハンドと呼ばれる手指の疾患には、どのような対処法がありますか?

酒井
症状の程度によって対処法は異なります。医療機関で行う治療としては、軽度の違和感やこわばりといった段階では、負担を軽減するためのサポーターやテーピングなどを活用した保存療法が選択されることが多いです。

また、症状が進行し、痛みやしびれが強くなって日常生活に支障をきたすような場合には、整形外科での診察が必要です。ばね指や手根管症候群など、明確な疾患と診断された際には、注射や手術などの外科的治療が行われることもあります。違和感の段階で放置せず、早めに受診することで進行を防げるケースも少なくありません。

一方で、日常生活で行うセルフケアとしては、指をやさしく動かすストレッチや、手を温めて血行を促すといった方法が有効なこともあります。また、先ほど髙松先生が紹介されたエクオールを生活に取り入れるのもよいでしょう。大切なのは、自分の変化に気づき、無理のない範囲でできることから始めていくことです。

一人で悩まず、専門家に相談を

女性が不調を感じたとき、どこに相談すればよいでしょうか。

三羽
まず婦人科の更年期外来等、そして整形外科などの医療機関を受診するのが基本です。特に婦人科の場合、自分の体調の変化を点ではなく線で、しかも総合的に診てもらえることは大きなメリットになりますから、かかりつけ医の先生をお持ちになるとよいでしょう。ただ、病院に行くのが難しい方もいらっしゃると思いますので、女性の健康とメノポーズ協会のような相談窓口を利用したり、地域の保健センターなどで相談するのも良い方法です。
髙松
更年期というのは、まわりの人に伝えるのが難しい時期でもありますね。
三羽
はい、家庭や職場でのコミュニケーションは大きな問題だと思います。夫や友人から「そういうの、気の持ちようじゃない?」などと言われて落ち込んだ、といったお声も多く届きます。でも、本人にしか分からない不調があることや、どのような症状が起きるかなど丁寧に伝えることで、少しずつ理解が深まっていきます。特に職場では、いま働く女性の4人に一人が更年期世代ですから、職場内での互いの仕事分担の融通や相互協力のためにも、女性のみならず男性も含めて職場の身近な人に「自身の体調や状況を伝えておく」ことがやっぱり大事ですね。

最後に、女性の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

髙松
更年期は誰にでも訪れる自然なライフステージです。「つらい時期」「我慢するもの」として過ごすのではなく、自分の体と向き合うチャンスと捉えてほしいと思います。いまは情報も支援も豊富ですし、我慢を美徳とする時代ではありません。不調を抱えているなら、ひとりで悩まず医療機関を頼ってほしい。それが、これからの健康人生への第一歩になります。
三羽
更年期には体調だけでなく、家族や仕事など環境の変化も重なりやすく、悩みが深くなりがちです。でも、上手に更年期を過ごした先には、人生の新たなステージが待っています。私は、年齢を重ねることで得られる幸せもたくさんあると実感しています。だからこそ、自分を大切にして、自分に適した暮らし方や働き方で歩んでいってほしい。その応援が、私たちの活動の原点です。
酒井
手の不調は、日常生活の中で実感しやすい症状です。「年のせいだから仕方ない」と思ってしまう方も多いのですが、違和感の段階で気づき、早めに対処することで、重症化を防げるケースは少なくありません。「手が自由に使える」ということは、誰にとっても、QOL(生活の質)を保つ上でとても重要なことです。その意味でも、日々の小さな変化に目を向け、自分の体を大切にしていただきたいと思います。
本記事をお読みいただいた皆様の中から抽選で最大500名様(事前登録制)を
オンラインセミナーにご招待します。
ご家族やご友人、ご同僚をお誘いのうえ、ご参加ください。
もちろん、お一人でのご参加も大歓迎です。

女性ホルモンと手指の不調
〜歳のせいだと諦めないで〜

講師:国立病院機構
大阪医療センター 整形外科
医長、上肢・手の外科センター長
有光 小百合 先生

専門領域:
手の外科、上肢外傷、肘の外科
所属学会(専門医資格等):
日本整形外科学会専門医、日本手外科学会専門医・指導医、
日本整形外科学会認定リウマチ医 等、多数所属
専門知識をもとに、きめ細やかな医療の提供をモットーに
日々診療に携わっておられます。
  • 対象者

    本記事を読んで申し込まれた方
    (抽選で最大500名様)

  • 開催形式

    Zoomウェビナー ライブ配信

  • 実施日

    2025年11月12日(水)
    19:30~21:00予定

  • 申し込み期限

    2025年10月31日(金)23:59

  • 当選者様への連絡

    2025年11月5日(水)

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初回掲載時期:2025年10月17日