更年期女性に多い
「メノポハンド」とは?

- 河村
- 中江さんご自身、あるいは同世代のお知り合いで、手指に不調を感じている方はおられますか?

- 中江
- はい、います。実は私、5年ほど前に年上の友人から「更年期には手指の不調が出やすい」と教えてもらったんです。彼女の指を見せてもらったところ、節が腫れて太くなっていて、とても痛々しい印象を受けました。私自身も年齢を重ねるにつれ、朝起きた時など手指のこわばりを感じるようになってきました。

- 河村
- そうした更年期にみられる手指のこわばりや痛み、しびれ、腫れといった不調を、私たちは「メノポハンド」と呼んでいます。これまでは「年のせい」「使いすぎたせい」と見過ごされがちでしたが、更年期に関係する不調と捉えることで、早い段階で対応できるようになってきました。

- 中江
- メノポハンドは、どうして女性に生じるのですか?

- 下江
- 背景にあると考えられているのは、女性ホルモンの一つ「エストロゲン」の変動です。エストロゲンには、手指の関節の周りにある滑膜を保護する作用があるといわれます。しかし、更年期に入ると急激に低下していくため、手指の不調が現れやすくなると考えられています。

- 中江
- なるほど。例えば「胸が痛い」「頭が痛い」となると「病院に行かなきゃ」と思うんですけど。手指の不調って「命には関わらない」という意識があるので、後回しにしがちな気がします。

- 下江
- まさに、その通りです。手指というのは、毎日使わずにいられない、大事なものなんですけども。

- 中江
- でも「メノポハンド」という名前があることを知れば、医療機関で相談しようかなと思うし、人にも伝えやすくなりますよね。

- 河村
- 最近は、患者さんご自身が「私、メノポハンドかもしれません」と言って来られることも増えました。認識してもらうこと自体が、受診につながる大きな一歩だと感じています。
メノポハンドとは?
更年期女性に見られる
手指の不調の総称です
メノポハンドとは「menopausal hand」の略で、更年期の女性によく見られる手指のさまざまな不調を総称した呼び名です。2022年に日本手外科学会が命名し、啓発活動を行ってきました。こわばりや痛み、しびれ、腫れ、関節の変形などが代表的で、背景には女性ホルモンの一つである「エストロゲン」の変動が関係していると考えられています。レントゲンでは異常が見られなくても、こわばりや痛みを訴える方は少なくありません。こうした不調が進行すると、腱鞘炎や変形性関節症、手根管症候群などの疾患(下図参照)として現れることもあります。更年期という体の変化と関係する不調として、早めに気づき、適切に対処することが大切です。
治療とセルフケア
症状に応じて選択
~注目の成分エクオール~

- 河村
- メノポハンドへの対処法は、症状の程度によって異なります。軽度であればテーピングや消炎鎮痛剤を用いた保存的な治療が中心になりますが、進行している場合には、炎症を抑える注射や、変形があれば手術を検討します。一方、ご自身で取り組めるセルフケアには、手指をお湯に浸して温めることや、ストレッチがあります。最近は「エクオール」という大豆由来の成分も注目されています。

- 中江
- 私も年上の友人からエクオールを薦められたことがあります。気になっているので、改めてどういうものか教えてください。

- 下江
- エクオールは大豆イソフラボンが腸内細菌で代謝されてできる成分で、エストロゲンに似た働きをすると考えられています。私は手指の不調とエクオールの関係について臨床研究にも取り組んでいますが、エクオールの活用によって、関節の腫れや痛みといった症状が和らぐケースが見られます。

- 中江
- セルフケアの選択肢が増えることは、とてもいいことですね。

- 下江
- おっしゃる通りです。私が研究をしていて感じるのは、エクオールを使用した結果には、個人差があるということです。だからこそ、「合うかもしれない選択肢の一つ」としてお伝えすることが大事だと思っています。
エクオールとは?
エストロゲンに似た働きが期待される成分です
エクオールとは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌によって代謝されて生み出される成分です。女性ホルモン「エストロゲン」と構造が近く、似た働きを持つことが知られています。ただし腸内でエクオールをつくる能力には個人差があり、日本人で産生できる人は、私の研究では4割程度でした。近年では、エストロゲンが急激に低下していく更年期のさまざまな不調との関係について研究が進められており、手指の違和感や痛みへの関与も注目されています。こうした背景から、必要に応じてエクオールを含むサプリメントなどをセルフケアの1つとして活用するという考え方もあります。
早期に気づいて
適切な対処を
メノポハンドは遺伝するの?

- 中江
- メノポハンドは遺伝しますか?

- 河村
- いわゆる遺伝病というわけではありません。ただ、メノポハンドの方には「お祖母様やお母様にも手指の不調が見られた」というケースがかなりあります。体質や、これまでの生活習慣が似ていることも影響しているのかもしれません。ご家族に同じような手指の不調があった場合は、注意すべき一つのサインと捉えるのがよいと思います。

- 中江
- 家族のことを思い返してみるというのは大事なんですね。そういえば私の母は、手の指が節張っていました。飲食店を営んでいて手をよく使っているからだろうと思っていましたが、いまにして思えば、メノポハンドだったのかもしれません。手指の不調を感じた場合、誰に相談するのがよいですか?

- 下江
- 基本的にはまずお近くの整形外科を受診されるのがよいと思いますが、手外科の専門医がいる医療機関だとより安心です。手外科の専門医がいる医療機関は、日本手外科学会のWebサイトで調べることができますよ。リウマチなど、似た症状を示す疾患もあるので、しっかり鑑別することも重要です。
日本手外科学会のWebサイトはこちら

- 中江
- 今日のお話を聞いて、手指の不調とは早めに向き合うことが大切だと感じました。手は日常を楽しむために大事なものですから。

- 河村
- 女性の患者さんの中には、手の見た目を気にされる方が多くいらっしゃいます。私たちも、治療ではまず「機能」を大切にしますが、同時に「見た目」や「その人らしさ」をできるだけ守ることを意識しています。

- 中江
- 同世代の女性の皆さんにも、年齢を理由に諦めたり、忙しさを理由に対処を先送りにしたりせず、専門家に相談して、よりよい対処をしてほしいと思います。今日はありがとうございました。
初回掲載時期:2026年2月27日










