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東京大学大学院教授・大須賀穣先生に聞く いつでも輝くために実践したい3つのケア。

「先制医療」の考え方で女性特有の不調を緩和するエクオール

第2回は、東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座教授で、公益社団法人日本産科婦人科学会の「女性活躍のための健康推進委員会」委員長を務める大須賀穣先生に、女性を取り巻く社会環境の変化と、女性の生涯の健康ケアについてお話をうかがいました。

大須賀おおすが ゆたか先生

東京大学大学院 医学系研究科 産婦人科学講座教授

1985年東京大学医学部卒業、同産婦人科に入局。95年、医学博士取得。
95~97年米国スタンフォード大学に留学。主たる専門は産婦人科手術、不妊症治療、子宮内膜症治療など。社会活動、学会活動を通して女性の健康支援の重要性を訴えている。

女性ホルモンとの付き合い方が鍵。

女性を取り巻く社会環境は大きく変化。
女性の健康支援の重要性が注目される。

近年、女性を取り巻く環境が大きく変化するのに伴い、女性の健康にも変化が現れています。

晩婚化、晩産化に伴う月経トラブルの増加

初産年齢が高く、出産回数も少ない現代女性は、昔に比べて月経回数が非常に多くなっています。
つまり月経前症候群や月経痛の経験回数も増えるということになります。
また、月経痛は出産を経るごとに明らかに軽減されることが、研究により示されています。
晩産化は、強い月経痛をより長い期間経験しなければならないということにもつながるわけです。
こういった月経周期に伴う体や気分の不調に悩んでいる人は非常に多く、仕事や日常生活に少なからぬ困難を抱えています。
さらに月経回数が多いことによって子宮内膜症や子宮筋腫などのリスクが増大します。

管理職に就く頃に女性ホルモンの変化・更年期症状に悩む人も

出産を終えて職場復帰し、しばらく経つと、今度は更年期の症状に悩む人が増えてきます。
抑うつやイライラ、ホットフラッシュやのぼせなど、症状はさまざまです。
管理職や接客業に就いている人で、「人前に出たときに汗が止まらなくて困る」と悩んで婦人科を受診するようなケースも少なくありません。

女性ホルモンの働きの変化にあわせた健康ケア、就労支援が必要

この4月、女性活躍推進法が施行され、企業に女性支援の体制作りが義務づけられました。
今後はますます女性の活躍が期待されています。
ただし、女性の体は男性と違い、常にホルモンの働きによる変化にさらされています。
それを無視した過重な働き方を強いるだけでは、本当の意味での女性の活力アップにはつながりません。
女性ならではの健康ケアを意識した就労支援が必要なのです。

女性の体は精密機械。
女性ホルモンの働きを踏まえ、もろい面に目を向けた3つのケアを。

私は30年あまり、産婦人科医として診療にあたり、研究を続けてきましたが、つねづね、女性の体は精密機械のようだと感じています。
女性ホルモンの働きによって、生理周期、ライフステージごとに、繊細に体が変化します。
非常に精巧に働く半面、もろいところがある。
それが女性の体です。
女性自身がそこを意識して生活することが、社会的な支援ともに、女性の健康ケアには大切だと考えています。
具体的に、実践してほしいケアの3つのポイントをお伝えします。

①我慢しすぎない

月経痛や更年期症状などで体や気分がつらい状態なのに、我慢して働かなければと考えている女性は非常に多いのが現状です。
我慢しても良いことは何もありません。
痛み止めの薬を飲む、休養をとるといった対処を早めにしましょう。
また、体調不良があれば、気軽に産婦人科を受診してみてください。
「イライラするくらいで受診してはいけないのでは」と遠慮する必要はありません。
月経に伴い決まって起こる症状であれば、それは治療の対象です。
ホルモン剤や漢方を上手に使ってコントロールすることも可能ですから、積極的に産婦人科に相談してください。

②正しい情報を積極的に取り入れる

自分の体をいたわるには、女性の健康について正しい知識を得ること、そして日々の体の変化を意識することが大切です。
たとえば、私も作成に参画している「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(※)」という女性の健康を支援するためのウェブサイトがあります。
こういったツールも活用して、不安を解消したり、適切な対処をしたりしていくことをおすすめします。

  • 参考:「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」は、女性の健康を支援するために厚生労働省の研究費により医療チームが作成したサイト。
    ( http://w-health.jp/ )

③自分の体の状況に合わせて行動する

女性の心と体は女性ホルモンの影響を強く受けます。
それに逆らうのではなく、むしろ女性ホルモンが作り出す状況に自分を合わせて行動するという考え方を持っておくと良いと思います。
たとえば、月経前に必ずイライラしてしまう人は、それに合わせて早めに睡眠をとる、好きなものを食べる、好みの入浴剤を入れてゆっくりお風呂に入るなど、行動を変えるようにするのです。
また、月経痛がひどい場合は、早めに痛み止めの薬を飲みましょう。
痛みが出るとわかっているなら、痛くなる前に飲んでも構いません。

エクオールは、女性ホルモン原因の不調に備えた「先制医療」的なケア。

エクオールは大豆イソフラボンが腸内で変化してできる成分ですが、腸内環境によってエクオールを作れる人と作れない人がいます。
作れない人も、エクオールを摂ることで、軽いホルモン補充のような効果が期待できます。
現代医療では、病気の発症前にそれを予測し、あらかじめ予防的な治療を行うことにより病気の発症を遅らせる「先制医療」の考え方が注目されています。
予防医療という言葉もありますが、先制医療は、遺伝素因や各種の生理学的指標によってより的確に、将来なりやすい病気を特定して先制するという考え方です。
エクオールの摂取は、この先制医療に近い意味合いで、健康維持を図る方法だといえます。
女性ホルモン関連の不調が少しでも気になり始めたら、エクオールを早めに摂ることをおすすめします。
そうすることで、将来起こりうるつらい症状を回避するのに役立つと考えられます。

女性ホルモンケアとは、閉経を境にした体の変化の段差をなめらかにすること。

女性は閉経を境に、「月経のある人生」と「月経がない人生」の二つを経験します。
閉経に向けて女性ホルモンが減少していくことで、さまざまな不調に悩まされたり、女性らしさを失ってしまうかのような不安を感じたりしている人も少なくないでしょう。
しかし私は、「年を経るにつれて良くないことばかりが起きるのではないか」と悲観的になることはないと思います。
閉経後はある意味、これまで女性ホルモンによって起伏が激しかった体が、安定した状態になるのだと考えれば良いのです。
今のシニア女性は、街で見かけても本当に元気で輝いています。
明るい未来が待っていると考えていいと思います。
ホルモンケアは、そういった前向きな考えの中で、「月経のある人生」と「月経のない人生」の段差をなめらかにして、つらい症状を緩和するためのものです。
痛みや気分のつらさは、体や心のSOS信号。
シグナルを無視せず、正しい知識を身につけて、自分の体をケアしてあげてほしいと願っています。

  • 2016年掲載

エクオールとは

大豆イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをするといわれ、女性の健康維持増進に貢献することが期待されてきました。
ところが研究が進むにつれ、大豆イソフラボンに含まれるダイゼインという成分が腸内細菌の働きによってエクオールという成分に変換されることでより強い効果を発揮することがわかってきたのです。
エクオールは 10mgの摂取で更年期症状の軽減や骨密度減少抑制、肌のシワの改善などさまざまな効果が確認されています。
しかし大豆イソフラボンを腸内でエクオールに変換できる人は日本人で約5割、欧米人では約3割にとどまっています。
女性ホルモンが急激に減少してくる40代以降は特に女性の健康維持増進のために、エクオールを腸内でつくれない人はもちろんのこと、つくれる人も、毎日エクオールを摂取することが大切であると考えられます。
エクオールに変換できる腸内細菌は現在15種類ほど見つかっています。
大塚製薬はその中で唯一の乳酸菌「ラクトコッカス 20-92」を利用し、1日10mg目安で摂取できるエクオールのサプリメントを開発しました。

エクオールについて

更年期お役立ちニュース

公開日:2020年10月29日