千葉西総合病院眼科部長・小原杏那先生に聞く ドライアイの改善方法と女性ホルモンの関係。女の涙は歳を取ると“質”が変わる!?
女性特有の悩みをサポートするエクオール
第3回は、千葉西総合病院眼科部長の小原杏那先生に、女性ホルモンの減少が原因となって起こるドライアイや目のトラブルについてお話をうかがいました。
小原 杏那 先生
千葉西総合病院・眼科部長
平成14年東邦大学医学部卒業。
日本眼科学会認定専門医。千葉西総合病院 眼科部長。外来での眼科一般診療の他、白内障手術、網膜硝子体手術を行う。
ドライアイの原因は?
女性ホルモンの減少で、女性の涙は“質”が変わる。
デジタル機器に囲まれて生活する現代、ドライアイに悩む人は増えている。
ドライアイを訴えて眼科を受診する患者さんは、男女問わず多くいらっしゃいます。
パソコンやスマートフォンなどデジタル機器の画面を見て過ごす時間は増加傾向にありますが、パソコン操作等の作業に長時間従事することで生じるドライアイや眼精疲労をはじめとした不調は、「VDT症候群(※1)」と呼ばれ、いわゆる現代のIT病として問題視されています。
- ※1 VDT作業:ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT(VisualDisplay Terminals)機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業。(厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」より)
女性ホルモンの減少に伴いドライアイに。
老眼が重なると、余計に目が疲れやすくなる。
特に女性は40代以降、“潤いホルモン”とも呼ばれる女性ホルモンの分泌が減少してくるのに伴い、全身症状として乾燥が進行する「ドライシンドローム」が現れやすくなります。
ドライアイもドライシンドロームのひとつに数えられ、症状は目の乾燥によるパサパサ、ゴロゴロするといった違和感、疲れや痛みなど、さまざまです。
ひどくなると頭痛や吐き気に悩まされることもあり、日常生活に支障をきたす深刻な症状だといえます。
また、この時期は老眼が同時に進行します。
40歳を過ぎたころから自覚する人が多いですが、30代から徐々に進行しています。
老眼とは、老化によって目のピント調節機能が低下することで、主に近くの対象にピントを合わせにくくなる症状を指し、ドライアイと老眼が重なると、とても目が疲れやすくなります。
ドライアイの人は、眼が乾くので涙を行き渡らせようと何度もまばたきをします。
まばたきをするということは、そのたびにピント調節をやり直さなければいけないということなのです。
ただでさえピント調節機能が低下していて見えにくいところに、何度もまばたきをしてやり直しをしなければならないため、余計に疲れやすくなるというわけです。
ドライアイの原因は? 女性ホルモンの減少で、女性の涙は“質”が変わる。
瞳の表面をおおって保護している涙は、単なる水ではありません。
ムチン層、水層、油層の順に三層構造を形成しています。
最も表面にある油は、水分が蒸発しないように保護する役割。
ムチンは胃粘膜や唾液にも含まれるネバネバとした成分で、瞳に水分を密着させておく働きをしています。
ドライアイの原因は、「量」の問題と「質」の問題に分けることができます。
シェーグレン症候群といった病気などが原因で涙の「量」が少ない場合もあり、ムチンの分泌量が少ないことで水分が瞳にとどまっていられないという「質」の場合もあるのです。
女性ホルモンの減少が原因となるドライアイは、どちらかというと後者の「質」の問題です。
加齢によって起こりやすい目の症状に「流涙症」があります。
加齢によるコラーゲン繊維の劣化などが原因で、涙の通り道である涙道の弾力が失われてたるみ、道が狭くなって涙があふれてしまう状態です。
いつも泣いているような状態で目の乾きとは無縁のような印象があるかもしれませんが、この状態でもドライアイが併存している場合があります。
涙があふれるほどあっても、ムチン不足によって瞳にとどまっていられないため、目の乾燥症状も同時に起こっているのです。
ドライアイの改善方法は、目薬と環境改善で。
エクオール摂取もひとつの方法。
ドライアイは根本的に治癒するものではありません。
対処方法としては、目薬と環境改善によって、うまく付き合っていくということになります。
まずは眼科を受診することをおすすめします。
ドライアイに処方される目薬は、ヒアルロン酸などを配合し水分を補給するものが主流でしたが、最近ではムチン配合の目薬が開発され、非常に良い改善効果をもたらしています(販売は医療用医薬品のみ)。
環境改善のめやすとしては、VDT症候群の予防、改善に向けたガイドライン(※2)が厚生労働省から示されています。
参考にするとよいでしょう。
女性ホルモンの減少に伴うドライシンドロームがドライアイの要因のひとつと考えられる場合は、エクオールの摂取もおすすめです。
エクオールは女性ホルモンに似た作用を持つ大豆由来の成分です。
ホルモン補充療法を受けている人や低用量ピルを服用している人で、ドライアイも改善されたという話をよく聞きますが、ドライアイだけのためにホルモン補充療法を受けることはほとんどないと思います。
エクオールは食品なので、どなたでも摂ることができることから、ドライアイやその他女性ホルモンの減少に起因すると思われる不調を訴える方に、おすすめしています。
エクオールを摂り始めて調子が良いとおっしゃる患者さんは多く、それをきっかけに、自分の中で「大豆製品が足りない、もっと食べるようにしよう」といった、良い方向での意識づけがされているようです。
診察で患者さんにお話をうかがっていると、ドライアイの症状だけでなく、いろいろな悩みをお話しくださることがあります。
年を重ねることに恐怖を感じたり、年をとることで自信を失っていたりすることもしばしばです。
私にお話してくださることで、それだけでもスッキリした表情で帰途につく方もいらっしゃいますが、それはご自身の体や気持ちとの向き合い方が、話しているうちに見えてくるからではないかと思います。
女性ホルモンの変化によって起こる体の変化をあまり怖がりすぎず、受け入れていく準備として、エクオールはひとつの方法だと考えています。
- ※2 VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン( http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/04/h0405-4.html )
エクオールとは
大豆イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをするといわれ、女性の健康維持増進に貢献することが期待されてきました。
ところが研究が進むにつれ、大豆イソフラボンに含まれるダイゼインという成分が腸内細菌の働きによってエクオールという成分に変換されることでより強い効果を発揮することがわかってきたのです。
エクオールは 10mgの摂取で更年期症状の軽減や骨密度減少抑制、肌のシワの改善などさまざまな効果が確認されています。
しかし大豆イソフラボンを腸内でエクオールに変換できる人は日本人で約5割、欧米人では約3割にとどまっています。
女性ホルモンが急激に減少してくる40代以降は特に女性の健康維持増進のために、エクオールを腸内でつくれない人はもちろんのこと、つくれる人も、毎日エクオールを摂取することが大切であると考えられます。
エクオールに変換できる腸内細菌は現在15種類ほど見つかっています。
大塚製薬はその中で唯一の乳酸菌「ラクトコッカス 20-92」を利用し、1日10mg目安で摂取できるエクオールのサプリメントを開発しました。